カリフォルニア通信

胸が踊るような何かを、カリフォルニアの空の下から。ロードバイクと写真と音楽と物理について。

伝統の決戦、ブエルタ・ア・エスパーニャが開幕!(+テロ追悼)

さてさてさて、ついに始まりますよ今年最後のグランツール

ブエルタ・ア・エスパーニャ開幕です!

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(写真ソース:La Vuelta 2017

ブエルタ・ア・エスパーニャとは

ブエルタ・ア・エスパーニャジロ・デ・イタリアツール・ド・フランスと並んで自転車ロードレース最高峰グランツールの一角を成す、伝統と格式高いステージ制レースです。

名前の通りスペインを舞台としておりますがあまりにも有名なため、ツールドフランスの「ツール」、ジロデイタリアの「ジロ」と同じように「ブエルタ」、欧米では "La Vuelta"と呼ばれています。

 

ラ・ブエルタのコースの特徴

スペインの山がちな土地を利用しているため全体的にやや山岳寄りのコースとなっています。今年も例外ではなく全体のうち多くが山岳ステージとなっているほか、「平坦」なコースも実際は斜度があったりと、スプリンターよりもクライマーやアタッカーたちの活躍が見られそうな構成になっています。

内訳は

  • チームTT x1
  • 個人TT x1
  • 山岳ステージ x5
  • 丘陵ステージ x8
  • 平地ステージ x6

です(ソース:GCN)。全体の距離は他のグランツール2戦と比較すると短めであるため集団のペースが上がりやすく、部分的にはジロデイタリアを凌駕するような激坂も登場するため各選手の実力と堅実なペース配分、そしてここぞというときのアタック力が如実に試されるツアーです。

 

今年の見どころ

見どころ1:

まずはツールドフランス終了後に飛び出したエル・ピストレロことアルベルト・コンタドール引退のニュースが最大のトピックのうちの一つとなっています。過去にグランツールのすべてを何度も制覇してきた伝説的な選手であるコンタドールは今年のツールでも善戦していましたが突然の引退を発表。母国スペインで行われる大会、そして今年最後のグランツールをラストランの舞台に選んだ彼は英雄として多くの国民の声援を受けながら2014年以来の総合優勝を目指します。

私自身コンタドールを見てクライムを始めたほどの大ファンなので彼が最後にどんな走りを見せてくれるのか、絶対に目が離せません。

コンタドールについてはジロ2015第16ステージでメカトラの際に敵チーム、アスタナにアタックされた後の怒涛の単独25人抜きでの先頭集団復帰が21世紀最高のクライムの一つとして有名です。

アシストゼロの状態となったコンタドール。 ここから単独ダンシングで「逆襲劇場」が始まった。
3人抜き。2人抜き。1人。1人。1人。1人。3人。4人。 同じスペイン人のイゴールアントンが引きの協力を見せて、さらに1人、4人を抜く。 そのアントンに一声お礼をかけて、コンタドールはさらにダンシングで単独登坂する。

〔ジロ〕第16ステージ 怒りのコンタドール 伝説的な怒涛ヒルクライム! | 日替わりExciting! | スポーツナビ+

動画もどうぞ。自転車乗りならこれを見て胸が熱くならない人はいないでしょう。私は何度見ても涙が溢れてきます。かっこよすぎて。

www.youtube.com

そんな彼の引退試合ということでメディアの注目度も高く、レース前の記者会見で彼は「楽しむため、そして戦うためにブエルタに来た。ブエルタは特別だ」と語っています。

www.cyclingnews.com

見どころ2:

最強すぎるオールスターチーム、チームSKYでエースの座を不動のものにするのは言わずと知れた現代最強王者のクリス・フルーです。今年のツールでチーム・個人優勝ともに手にしたチームスカイは絶好調のフルームをおよそ20年ぶりの同年度ツール&ブエルタ総合優勝者に仕立て上げようと万全の準備を整えてきています。

グランツールの中でも最高と位置付けられるツールドフランスがシーズン中盤に位置しているためトップ選手はジロで勝ててもブエルタでは勝てない、ツールで力尽きてしまうと言われてきました。実際ファンとして考えただけでも「あれだけ過酷な戦いをした後にもうやるの!?」という感はありますが、それはそれ。ここで優勝を手にすれば過去の歴史でもたった二人しか成し遂げていない同年度内のツール・ブエルタ両方優勝という最高の栄誉を手に入れられるため、ケガなくツールを乗り切った上にアシスト陣も絶好調の今年は一番のチャンスなのです。

そのフルームは公式インタビューにて

Chris Froome: “The strongest Team Sky we've ever had at La Vuelta” 

La Vuelta 2017 : D-1 - News pre-race - La Vuelta 2017

「今年のチームスカイはもう最強だ」と胸を張って言い切っているため大きな期待ができそうです。中継中に今年の優勝は誰になるかと予想を聞いたら視聴者の半数はフルームと答えるでしょう。チームスカイの本拠地、英国ではBBCが各ステージのフルームに関する予想を詳細に公開しています。

www.bbc.com

まとめ+テロ追悼

愛と情熱の国スペインらしくトップの選手は真っ赤なジャージ、マイヨ・ロホを着用します。前世代の最強クライマー、コンタドールや現代の不動王者、フルームをはじめ多くのトップ選手たちが栄誉の赤ジャージを求めて最高の走りを見せるブエルタ・ア・エスパーニャの第一ステージ・チームTTは本日(8/19)開幕です。今年はレッドジャージを着て最終ゴール、マドリードまで最初にたどり着くのは誰になるのでしょうか。目が離せません。

GCNのブエルタ解説動画が普段と違ってスペインモードになっていてオシャレなのでこちらもどうぞ。

www.youtube.com

また、最後に、バルセロナで発生したテロの犠牲者の方々に深い哀悼の意を表します。昨年の今頃私はバルセロナで一人旅をしていました。コンクリートも突き抜けそうな強い夕陽に照らされた自転車の写真を撮ったのは事件が起きたランブラス通りのまさにすぐ横の路地。

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オジサンが少し写っていますが、これを撮るために路地の人の流れが途切れる瞬間を見つけるのでさえ大変なくらい活気のある町でした。

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あの明るくて熱くて快活な街で破壊行為が行われたという事実が非常に悲しく、許せない気持ちでいっぱいです。

起きたこと、失われたものは取り返すことはできませんが、人が人の力だけで自然と向き合うレースを通じて少しでもバルセロナとスペイン全体に明るさが戻ればいいなと願っています。

坂を登れば分かりますよね。人間がどれだけ小さいのか、どれだけ非力なのか、だけどどれだけ強く生きているのか。人と人が殺し合っている場合ではありません。

どうか平和になりますように。

 

ではまた。

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