カリフォルニア通信

胸が踊るような何かを、カリフォルニアの空の下から。ロードバイクと写真と音楽と物理について。

カーボンホイールを考える: Easton EC90 SL (2/3)

前回からの続き。

sterling-ym.hatenablog.com

wiggleで時折半額程度まで値引きされることのあるEASTONホイールが買いかどうかをデータから検証します。

 

EASTONとは

EASTONは1922年にアメリカで創業された歴史あるアメリカの会社です。主に「筒状のもの」を製品としており、軽量で精度の高いアーチェリーの矢はオリンピックの決勝で毎回必ず使用されるほど世界的に評価されています。自転車に関してはEASTONの高いカーボン技術を活用するスポーツ製品の一環としてホイール、クランク、ハンドルなど(やはり筒状のもの...)を製造しています。

アーチェリーの分野で培われた高い信頼性が有名でMTBシクロクロス用のカーボンホイールがよく売れていますが、ロードバイクのプロチーム(現在は各国のコンチネンタルレベル、過去にはワールドツアーのチームBMCにも供給)のほかカナダのオリンピック選手(トライアスロン)であるBrent McMahonなどにも使用されているようです。

 

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(c)すたりん

 

EASTON EC90ホイールのラインナップ

EASTONが誇るカーボン技術がEC90。ほぼすべてのカーボン製品にこのグレードのカーボンが使用されており、2018年現在ロードバイク向けにはEC90 SL, EC90 SL DISC, EC90 Aero55の3種が販売されています。このうちEC90 SL DISCはEC90 SLをディスクブレーキ向けにスポーク数を増やして強化したもので、リムの種類としては実質2種類となっています。

  • SLはオールラウンダー向けの軽量38mmリム。
  • AERO55は空力性能にステータスを全振りした55mmのディープリム。

どちらも後述する極厚リムサイズにより空力性能が最大限まで引き上げられており開発時点ではどちらのリムハイトでもZIPPを含む他社のディープリムホイールより性能が良いという実験結果を売りにしています。(EASTON自社調べなので真偽のほどは不明)

 

EC90 SLの特徴

 SLとAero55はリムハイト以外多くの特徴を共有していますが、ここではSLに絞って特徴を並べてみます。

 

極厚のファントムリム

Eastonホイールのアイデンティティといえる極厚のフォルムはEaston社による説「自転車に吹く風のほとんどはクロスウインドである」をもとに総合的に様々な角度での空力を最大化するために生み出されました。外径28mmは多くのリムブレーキで最大限まで開いた大きさと考えるといかに分厚いリムかが分かります。

 

詳細はこちら。Aero55についての解説ですが理念は共通です。

図をメインに解説してくれているので英語が苦手でも大丈夫。

youtu.be

Easton社によるとSLモデルを他社と風洞実験で比較したところzipp 303やENVE SES 3.4などのオールラウンドホイールと比較して「最軽量」「最大エアロ効果」との結果が出たとのこと。(参考:Easton EC90ホイールカタログ(リンク先はpdfファイル))

なおこれは2015時点の結果であり、2018年現在zippは気流の剥離を抑える凹凸処理を施した究極にエアロなホイールを登場させているので結果はまた異なるかもしれません。

(気流の剥離とはエアロ効果を生み出す前提である「気流がホイールの表面に沿って動く」という前提が崩れる現象です。飛行機が気流に対して翼の角度をつけすぎて失速する現象と同じで、これが起こると突然空力に関する効果がなくなってしまいます。)

何にせよエアロ効果はそのあたりのトップクラスに位置していると見てよさそうです。

 

CX-Rayスポーク

小さいようで意外と大事なスポーク。信頼と安心のCX-Rayスポークなので文句なしです。

・Echoハブ

近年Easton社が独自に開発したのがEchoハブ。一番外側のカバーを引き抜くとすぐにベアリングにアクセスできるメンテナンス性と幅広の構造による横剛性と耐久性の向上が売りになっています。上述のEASTON社カタログによるとエコーハブのベアリング幅95mmは他に幅広の特徴をもつシマノホイールを抜いて業界最大とのこと。

ラチェット音はうるさすぎない範囲を維持しつつも存在感があり、高速空転時はジージーとセミのような音で鳴きます。

・水転写デカール

メーカーロゴがシールかペイントかで質感は断然変わります。EASTONと輪郭がかたどられたロゴは水転写デカールによるものなのでGOOD。

・職人による手組み

EASTONが以前から大切にしているのが職人によってひとつひとつ手組みされているということ。他にもDT Swissなど有名な会社はそれぞれの誇る職人が手組みでホイールを完成させていますがここが品質を大きく分ける部分になります。

以下の動画にもありますがすべての製品が手組みかつ専門スタッフの個体検査を経て届けられるので品質管理という点で信頼がおけます。

以前は手組みをアピールするあまりホイール側面に大きく手の形の手組みマークがついていたようですがさすがにデザイン的に微妙だったのか現在はスポークの出ている内側に小さく当時と同じマークが描かれています。どうしても手組みのアピールを残したかったのでしょう。(笑)

 

こちらの動画はホイールがカーボンのシートから完成されるまでを追ったEaston社のPR動画。写っているのはひとつ古いモデルですが製法自体が大きく変わることはないので現在もこうして作られていると思って視聴すると楽しいです。

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・軽量

EC90 SL チューブラーモデルはかなりの軽量級で、カタログ値1167g。

クリンチャーは1473gでチューブレス対応となっています。

 

まとめ

EASTONホイールの中でもオールラウンダーとして各部分に気を使って作られたEC90 SLホイールはEASTON社の誇るファントムリムによるエアロ効果、オールラウンダーとして完璧な1160g台の重量(チューブラー)、そしてEchoハブによるベアリングの高いメンテナンス性と剛性を備えたハイエンドホイールと見て間違いなさそうです。

 

チューブラーとクリンチャーの論争にはここではあえて触れませんが、軽量化したいと言いつつクリンチャーを選ぶのはナンセンスだと私は考えるので総合的なバランスとしてはEC90 SLチューブラーモデルが一番オールラウンドに違いを体験できるホイールであると私なりの結論を出しました。

 

ということで散々引っ張りましたがWiggleのセール中に悩みに悩んだあげく購入。

さらばPrimeホイール。あれだけ悩んだ上にリサーチを重ねて買わなかったものはきっとPrimeホイールが初めてです。値上げは良くないぞWiggleさん。(笑)

次回はインプレと愛車黄タマに装着した写真などを載せます。

 

ではまた。

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