カリフォルニア通信

胸が踊るような何かを、カリフォルニアの空の下から。ロードバイクと写真と音楽と物理について。

カーボンホイールを考える: Easton EC90 SL (3/3) インプレ編

お待たせしました!

sterling-ym.hatenablog.com詳細リサーチ編からの続きです。

 

日本でEASTONを使っている方は少なめでインプレ記事があまり多くないのでなるだけ詳細に、どの他のインプレ記事よりも深く掘り下げるつもりで書いてみます。

 

2018年3月某日、悩みに悩んだ末に EASTON EC90 SL をホイールとして選択し、wiggleにて購入しました。同価格帯だとハイエンドのアルミホイールwiggleオリジナルブランドのPrimeホイール等もあったものの、決め手は軽量とエアロをどちらも手に入れられるオールラウンダーとしての特性を明確にしていたこと。

過激なリムハイトでないので普段使いできること、山を登れること、でも空力を犠牲にしていないこと、という点で高さ38mm×厚さ28mmの超ワイドセミディープリムは最適に思えました。

購入後1000kmほど乗ったので実際にどうたったのかということを分かる範囲でインプレします。

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購入の手順

Wiggleのセール期間に他の必要部品やタイヤと同時に注文しました。

セール期間は多くのものが劇的に安くなるので狙い目ですが、実はこのまとめ買いに落とし穴が待っていました。

 

アメリカでは個人が輸入したものでも800ドル以上の品物には関税がかかります。

今回注文したのは単価が600-700ドルのホイール2つとその他の細々したものが100ドル分でしたが、それらをまとめて購入してしまったため「買い物総額が800ドル以上」ということで関税をかけられてしまいました。その額11%,150ドル(+手数料)。

しかも運送会社の担当者がよく把握していなかったため車のホイールだと思われてしまったらしく(ホイールの入っている箱の幅が車のホイール幅に全然足りないのは一目瞭然だったと思うのですが)、税関を通過するために自動車関連製品輸入手続きをしろとの書類が送られてきたりと何かと面倒でした。

カリフォルニアに到着したことは分かっているのにそこからメールのやりとりが遅々として進まない数日間を経てやっとホイールが到着したのは注文から10日後。普段は1週間以内に届く超速wiggleに慣れていたのでだいぶ待ったような気がしましたが、それでも早いものです。ちなみに間違いと遅延に対する謝罪は一切ないのがアメリカ式。

 

到着・外観

ホイールは一つずつ箱に入って到着。見た目に反して異常に軽い箱に期待が膨らみます。

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箱にはテンション調整済みのホイール本体、クイックスキューアー、カーボン用ブレーキ(後述します)、バルブホールスペーサー、10速用スペーサー、取扱説明書が付属します。ホイールバッグはありませんがいわゆる観賞用兼決戦用とかでもないので気にしません。機材は使ってナンボ。

外観は至ってシンプル。カーボン地の雰囲気がそのまま楽しめるボディーにロゴが入大きくっていますが中抜きのフォントなのでスタイリッシュです。個人的にこういうデザインはカンパニョーロやシマノなどの大企業のロゴ丸出し感よりも好きです。

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カーボンはコーティングがあるような無いような自然なマットフィニッシュで好感が持てますがグロス派の方も一定数いるようなのでここは好みの問題でしょう。

 

重量

到着後実測重量は

フロント:526g

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リア:674g

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でした。共にリムテープなし、スキューワーなし。

合計するとちょうど1200gになります。ナニコレ軽い。(笑)

 

ちなみにタイヤはコンチネンタルのゲータースキンを選択したので最高グレードと比較するとかなり重めの300g/個。チューブラーに慣れる前にパンクしたくないのであえてこれを選択しました。そして他社とは違うハブの構造を支えるための特製スキューワーは72g/個。したがってタイヤを含めた総重量は2000g弱ということになります。いつか良いタイヤを履かせてあげたいものです(ホイール購入で金欠につき延期)。

 

チューブラータイヤ装着

今回は軽量性最重視でチューブラータイヤを選択したので慣れない手つきでこわごわチューブラータイヤを装着しました。手順としては、

1.空気を入れて適度にタイヤ本体を膨らませて数時間放置

2.テープを貼っていないホイールにタイヤをはめて高圧で放置

3.一度外してリムにテープを貼ってからタイヤをはめる

4.タイヤを少しずつ持ち上げながらテープの反対側をはがす

という感じです。セオリー通り。個人的な感想としてはワイヤーが入っていないのでクリンチャータイヤよりも作業後に手のダメージが少なかったような気がします。

シームレスな表面のカーボンホイールに滑らせるようにしてタイヤを装着するのが楽しくてむしろクリンチャーより良いのでは!?と思うほど。

外すときのことは考えていません。(笑)

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ブレーキシュー交換

アルミからカーボンに乗り換えるときに忘れてはいけないのがブレーキシュー交換。スイスストップの黄色パッドが付属しています。

交換自体はシンプルで、側面ネジを外してアルミ用パッドを抜き取ってから黄色パッドを入れ替えるだけ。ただし、わざわざアルミ用からカーボン用に変える理由のひとつにパッドに付着した細かい金属片がカーボンを傷つけないようにするためということがよく言われているので、念のため黄色パッドを入れる前にブレーキ周りを濡れタオルで掃除しておきます。黒いパッドを触ると手が真っ黒になります。掃除して良かった。

 

シェイクダウン

最初の試走は普段から走っている峠で普段と同じくらいの時間帯に行いました。シェイクダウンといってもあくまで主観的な感想です。

※追記:「よくわからないけど速い!」という何も伝わらない下書きを書いていましたが1000km走った後の感想を追記したのでブレーキ性能とエアロ効果に関してのみシェイクダウンの感想を残しています。

・ブレーキ性能

カーボンはブレーキが弱いよ!と散々言われていたからか、問題は特に感じません。カーボンらしいシュルルルルという音はしますがブレーキの効きが弱いと感じたことはなく、むしろ熱対策のために連続的なブレーキを避けて局所的にしっかりと握るようなブレーキングをしてもしっかりと止まってくれます。アルテグラのブレーキ、スイスストップのパッド、そしてイーストンのブレーキ面(若干加工されています)の組み合わせは極端な高速での急ブレーキでなければ(そんなものは試していませんが)完璧といえるでしょう。本格的な10km、6-10%程度の連続したダウンヒルにも何度か挑戦しましたが安心してブレーキができました。

・空力特性

エアロに関しては宣伝されている通り、いかにもエアロリムといった高速巡航下での安定性を感じます。また横風は本当に極端なものでない限りほとんど振られません。これもワイドリムの恩恵でしょうか。何よりコォォォォという音が聞こえてくると速く走っているような錯覚( )ができて楽しいです。

 

1000kmを共に走った感想

記事を書かずにモタモタしている間に2ヶ月が経ち、1000km近くを走ったのでその感想を。個人的にはここが一番大事だと思っています。

まず、ひとことで書くならば、満足!です。確実に得られるエアロ効果と超軽量リムの軽快感は他のアルミリムでは絶対に味わえない楽しみをもたらしてくれます。

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具体的には、タイムを狙って峠を登るときの序盤の浅い登り区間(2-3%)とクライム区間(5-15%)の切り替えが非常にシームレスで、むしろ切り替えるという感覚なく速度を維持したまま登坂に突っ込んでいけます。ひとつの理由として軽量さの恩恵でスピードのロスを感じないというのはあると思いますが、このホイールの持つ軽さと安定性のバランスがとても素晴らしいことがより大きな理由としてあるように思います。

バランスというのは、登坂に最適な超軽量リムでありながらペラペラ感がないということ。剛性云々というよりは安定した重心を感じられるという意味です。リムから伝わってくる地面をダイレクトに蹴りだしているような振動がホイールの持つ安定感に支えられてそのまま加速度となっているのを感じます。登坂ダンシングの喜びを最大限まで高めてくれるホイールです。

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また平地でTTごっこをしているような時にもエアロリム独特のコォォォという風を切る音と共に加速を感じることができて高い満足度を得られます。この点は非常に主観的な評価になりますが、ローハイトリムと比較して20mph以上(32kph~)からの踏込みに対する反応性の違いはさすがエアロリムといったところです。私はスプリントはダメダメなので平地の無風状態では35mph(56kph)までしか出せたことがありませんが強い向かい風でも30mphくらいまで引き上げてくれるリム自体にはもっとポテンシャルがあるように感じます。

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ただし、このホイールの弱点としては、皮肉なことにおそらく軽すぎることを挙げなければいけないように感じます。私はクライム派なので問題は感じませんが、バリバリの平地派の方が使うとするとこのホイールはおそらく軽すぎて回転慣性の恩恵をまったく得られないことが問題となると思います。軽さ故に加速は驚くほど速いけれど、「いったん回り始めたら止まらない」フライホイール感は全くありません。たとえば本格的な平地タイムトライアルに使うホイールではない、と断言できます。そもそも40mmリムをTTに使う人はいませんが。

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また、同じことはタイヤの空気圧と踏込みに対する反応性に関しても言えます。軽いためか、高い縦剛性によるものなのか、踏込みと振動のバランスがとれるタイヤの空気圧の調整がかなりシビアです。100psi程度の高圧だとガチガチすぎて余程スムーズな路面でなければパワーロスが大きすぎ、逆に70psi程度の空気圧だとホイールとタイヤの一体感を感じられずにモッサリしてきます(タイヤは25cを使用)。 私はコンディションとタイム狙いの有無によって85psi-95psiあたりを使い分けていますが2-3psiの違いでも真剣に走ったときのタイムに大きな差を感じます。

良くも悪くもタイヤの接地面からの感触をじかに伝えてくれるホイールなので鉄下駄のようにとりあえず空気が入っていればだいたい同じように走るという感じではありません。ただこれはいちがいに悪いことははいえず、ギリギリ脚力で踏み切れるだけの振動が伝わってくる空気圧までできるだけ上げつつガシガシ踏む、とうような乗り方をすると面白いように速度が乗ります。

ひとことでいうとレーシーなホイール、ということです。

 

ちなみに前述の峠区間は半年で2500人近くの履歴がある激戦区ながらホイールのおかげか先日年間6位にランクインしました。30秒以上のタイム差をつけている1位の人はプロなので無視するとして、タイム的には2位に10秒まで迫るところまできました。

真剣とはいえ趣味勢なので競技勢のタイムに食い込めるのは嬉しい。

ターマックイーストンホイールの組み合わせ、強いなあ。

 

 

その他・まとめ

最後に、誰もが気にする剛性のお話。前述のように縦剛性はおそろしく高く、かなりのダイレクト感があります。横剛性に関してはエコーハブの極幅広設計のおかげで特に問題はなく乗れていますが、体重50kgの軽量級である私がダンシングで心地よいリズムを感じる程度にはしなやかなので、80kg台の人が平地で1000Wのスプリントをするような場面では剛性が不足しているかもしれません。ただし剛性は本当に主観的な問題なのでこればかりは乗ってくださいとしか言えません。私にとっては何度も述べているように丁度良いダイレクト感&リズム感を作る程度の剛性なので峠のダンシングが楽しくてたまりません。

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インプレは以上です。

いかがでしょうか。私に分かる範囲で詳しく書いてみたつもりですが、足りないところや質問があればコメントを頂ければ対応します。

購入後2か月以上が経過しましたが、いまだに後悔をするポイントを何一つ見つけていません。満足度の高いホイールです。最近EASTONは超ディープリムをラインナップに追加したようなので平地派の方はそちらも見てみてください。オールラウンダーなら間違いなくこのEC90 SLです。

 

Twitterのフォロワーさんはご存じかと思いますが最近非常に興奮する自転車レースイベントに行ってきましたので早いうちに写真を紹介します。

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それではまた!

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