カリフォルニア通信

胸が踊るような何かを、カリフォルニアの空の下から。ロードバイクと写真と音楽と物理について。

原点からの距離: 小澤征爾の入院で思うこと

こんにちは。

ずっとロードバイクの話題を続けていましたが今日は私にとって重要なニュースを見つけたので少しだけ音楽の話を。

 

日本の誇るマエストロ、小澤征爾氏が入院されたとのこと。

headlines.yahoo.co.jp

私にとって小澤征爾さんには一ファンとしてだけでなく特別な思い出があります。

 

本格的に競技としてのピアノの世界に入る前、小学校に入学するかどうかという幼い頃、小澤征爾さんがウィーンフィルで振ったラデツキー行進曲のCDを買ってもらって毎日のように聴いていた時期がありました。

おそらくニューイヤーコンサートのCDです。この曲の何が幼い私に共振したのか定かではありませんが、ラデツキー行進曲だけにひたすらやみつきでした。

ピアノの先生に相談したところまだ手も小さく体格も同世代の子たちより一回り小さかった私のために専用の楽譜を作ってもらうことになり、その年の発表会では小澤征爾になったつもりで楽しく弾くことができました。

おそらく私のピアノに関する記憶の中で一番最初に舞台で演奏することを楽しいと思った瞬間だったと思います。

 

その後ステージで演奏する機会を求めるうちにコンクールの存在を知り、そのままひたすらピアノ一筋の少年時代を送ったのはまた別の話。

 

小澤征爾さんに関してはその時幼い私の耳に響いた感覚がそのまま印象として今でも残っています。

 

そんなこんなで尊敬してやまない小澤征爾さんですが、実は2年前に実際にこの眼と耳で演奏に立ち会える機会がありました。サイトウキネン2016, ベト7の回です。

 

私は2016年の夏、自分自身を見つめ直すために一度アメリカから脱出して1,2か月間ヨーロッパを放浪していました。既に日本を出て一年半が経過していた当時それまでの日本の生活を捨ててアメリカでの基盤を作ることが辛く精神的に限界が来ていた私にとって非常に良い時間でした。

その帰りに寄ったのが日本の長野県松本市、松本ミュージックフェスティバルの開催される小さな街です。

 

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音大にいる友人が高校時代はチェロ奏者としてオーケストラにのめり込んでいた私と卒業後も絡み続けてくれていて、その音楽祭の目玉であるサイトウキネン・オーケストラによる小澤征爾の公演のチケットを取れたからと誘ってくれたのです。

 

私の音楽の原点ともいえる小澤征爾がかの有名なベートーベン7番を振るとどうなるのだろうと楽しみに、バックパック1つでヨーロッパを放浪した帰りでしたが私なりにできる一番綺麗な身なりで気合を入れて行きました。

 

しかし、演奏会で私が体験したものは私の想像の遥か先にありました。

良い意味で、です。

衝撃を受けた、とか、胸を打たれた、とか、そういう言い回しさえ勿体なくて使えないほど、美しい演奏でした。美しいのに、それでいて今まで聴いたどんな演奏よりも生き生きとしていて、第一楽章の一音目を聴いた瞬間から自分はとんでもないものに立ち会っているという畏れと感動でいっぱいでした。

ピアノにしろオーケストラにしろありとあらゆる曲を演奏したり聴いたりし続けてきたつもりでしたが、人生の中であれほど衝撃を受けたことはありませんでした。

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音大の友人と一緒に涙を流しながら拍手をしている間、小澤征爾は歴史に残る最高のマエストロの一人なのだなと考え続けていました。

 

あの演奏会に行くことができた私は幸せです。

 

私の音楽の原点であり、そして私が音楽から離れてアメリカで新しい生活を作るときにふたたび生きる力を与えてくれたマエストロ、小澤征爾

しかし幼かった私がいつの間にか成人してアメリカの大学生となったのと同じ分だけ、年齢は確実に巨匠の身体に老いを刻んでいることも事実です。

ここ数年間はずっと体調との闘いであったようですが、音楽は人間の域を超えても身体はこの先ずっと健康でい続けられるわけではありません。

 

その事実があまりにも寂しく、でもまだ諦めたくなくて、

頑張れマエストロ、と呟く夜です。

 

一日も早いご快復となりますように。

 

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次の日に見学した松本城。日本らしくて良かった。

 

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とある喫茶店にて。松本と聞いてサイトウキネンより先に漫画が思い浮かぶ人には分かる場所。夏の暑さが少し遠のく静かな空間で友人と語り合った時間。幸せでした。

 

日本に一時帰国(?)した時はほかにも良い思い出がたくさんあるので書いていて懐かしくなりました。また久しぶりに帰りたいなあ。

それではまた。

ツアー・オブ・カリフォルニアを走る:サンノゼ市 San Felipe Road (1)

こんにちは。

元々この原稿は2月中旬に書いていたものでしたがいつの間にか3月になってしまいました。仕事も勉強も量自体は以前とあまり変わらないはずなのに細々したことが増えたので体感的にはとても多忙な日々を過ごしています。

今日は風邪をひいて自転車に乗れなかったのでその時間を使って面白い道路を紹介します。

 

最近、ベイエリア第2の都市サンノゼ近郊にある広大な土地で友人と自転車に乗る機会が増えています。その名もSan Felipe Road,昨年度のツアーオブカリフォルニアの舞台となったロードバイクのローカル聖地のひとつです。

 

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San Felipe Road (サン・フェリペ・ロード) : 一日目

2月某日土曜日、誘われるままにグーグルマップで下見もせずにライドに出発。

朝早くスタートするため車に自転車を積んでで現地へ。東京にいた頃なら輪行という選択肢がメインだったのでしょうがカリフォルニアには州を縦断する巨大な鉄道以外にはバス程度しか公共交通機関がなく、目的地には基本的に車で移動します。

行き先は最近グラベルバイクを納車した例の友人宅。坂の多い土地に整った街並みが続くちょっと高級な地区です。

 

到着して適当に挨拶をすましてから、彼がいきなり一言。

「俺今日は持ち物何もないから補給食とか色々よろしく。」

え、どういうこと??と聞き返すと、まだボトルも持ってないし買ったサドルバッグには携帯は入らないし、何も持っていけないとのこと。当然ジャージなんて持っていないので彼の自宅の鍵と二人分の補給食は私の背中のポケットとツールボトルに押し込まれることになりました。

 

予想外の出だしにずっこけながらも家の前の坂道を下ってライド開始。気持ち良い朝の風を受けながら右手を向くとガードレールの向こう側にはサンノゼの市街が見えます。住宅街の中に突然ビル群が現れるのは新宿の風景と似ています。東京を見慣れているとなんということのない風景でも、基本的にビルの少ないアメリカにこの風景は貴重。アップダウンの激しい街並みを抜けながら10分ほど走ると目的地の入り口が見えてきました。San Felipe Road,広大な自然保護区をぐるっと一周するルートの前半部分です。

 

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目的の道路に入ると突然現れた木々に街並みが遮断され、いきなり別の国に来たような雰囲気が待ち受けています。気がつくと普段あまり聞かないような鳥の鳴き声が自分たちのまわりを360度取り囲んでいました。道の横には鹿が歩いていて斜度4-8%くらいの道をハアハア言いながら登っている私たちを珍しそうに眺めています。目を合わせたら軽々と走り去っていってしまいました。

 

数分前まで綺麗に整備された人間中心の都市にいたはずなのに、保護区に入った途端に土地の主が変わる。自分たちが鳥やら鹿やらリスやらに部外者として観察されている...この感覚がロードバイクならではのスピード感を体験させてくれます。舗装路は少し古く亀裂に気をつけなければいけない区間もありましたが部分的には綺麗に舗装し直されていて、反対側からはお揃いのチームジャージを纏ったオニイサンとオネエサンたちが物凄い勢いで下ってきます。

そう、このルートはロード乗りの間で非常に有名なのです。

 

友人のS君はロードバイクにこそ2週間前から乗り始めたものの長年サッカーとテコンドーを続けてきたため私の2倍くらいの太さのある太腿(しかもほとんど筋肉!)を持っていていかにもスプリンターといった脚質。初心者に脚質も何もないだろうと思っていましたが意外と得意不得意は如実に現れるようで、登りがきつくなった途端に徒歩のようなスピードに落ちます。

 

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雄大な景色を見下ろすクライム区間。10%の斜度は初心者にはキツい。(写真は記事の1週間後のもの)

 

森林のような地帯は付近に流れる小川の冷気もあってひんやりとしています。

冷気がふわっと身体の付近を通り過ぎると鳥や小動物の鳴き声が遠のいて道路に自分たちだけがいるような感覚になるのが不思議です。

瞬間的に坂道スプリントで身体を暖めたりしつつS氏のスピードでゆっくりと坂を登っていく15分程度の間に景色は森林から山岳(崖やら大きな岩やら)、草原と景色を変えてから傾斜の浅いダウンヒルに突入しました。

 

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 車の来ない舗装路、緩やかなダウンヒルロードバイク、仲間とライド中、と来ればすることは一つ。Ultegraの硬いダブルクリック音を合図にレースを開始しました。

 

(2)に続きます。

あけましてグラベルロード(3/3)購入編

あけましてグラベルロード。

あけましておめでとうございますと言っているうちにいつの間にか2月。師走って本当は1月のことだったんじゃないだろうかというくらい一気に過ぎ去っていきました。

 

もうあけましておめでとうというような時期でもないかもしれないけど、シリーズなのでタイトルは維持しつつグラベルロード紹介の最終回。

前回予告した通り2018年早々にグラベルロードを購入したので自慢します。

 

日本は雪やらインフルやらで大変そうですがカリフォルニアは平均気温が既に20℃前後(!)。もう春ですねといわんばかりの穏やかな気候で趣味に時間を費やすには完璧の季節となってきています。

 

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グラベルロード Verenti Substance Sora 2017

さて、去る1月上旬に今年最初の大きな買い物として上記の通りグラベルロードを購入しました。VerentiはWiggleが独自に展開するエントリークラスのロードとグラベルロードのブランド。ブランド料がゼロに近いことからコストパフォーマンスに優れており、見た目もクロモリフレームならではの細さですっきりしています。

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セール期間につき定価の60%くらいで購入できたので市場に出回っているロードバイクの最安値くらいでグラベルバイクを手にすることができたことになります。これは大きい。

カリフォルニアにはオフロードのトレイルがたくさんあるし、だからこそあえてカーボンでも高級コンポでもないバイクを持つことには意味があるような気がします。軽量高速(そして高価)なロードバイクを持っているからこそ二台目のサブバイクは細かいことを気にせず使い込めるのが大事です。ハチロク的な。

 

主なスペック

スペックというほどのものはないけど、ロード乗りならこれを見ればだいたい想像がつくと思うのでこの自転車の概要を載せておきます。

詳細はWiggleにて。

 

#フレーム: Verenti Substance 2017

#フォーク・フレーム共にクロモリ。走行時重量12kg弱

#STI: Sora 触覚のない世代

#ブレーキ: TRP ケーブル式ディスクブレーキ

#タイヤ: 38c トレッド

#ホイール: CXD26

#クランクセット: FSA

 

どれもオフロードのロングライド程度であれば余裕で実用に耐えるレベルで信頼のおけるコンポーネントながらトータルとして低価格に抑えられているのが特徴。

後述しますがリムブレーキロードバイクに乗っていると低価格モデルでもディスクブレーキには感動します。

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デザインに特別な格好良さはないものの無難にFSAとシマノでまとまっている足回り

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そして初ライド・初オフロード!

到着した当日に自宅で組み立てて、いざ出陣。

まずは登り慣れた自宅付近のミニ峠でメインバイクとの感覚の違いをテスト。

 

...登ります、これ。

初体験のクロモリフレームは意外な軽快さを持ちつつ安定感をもって支えてくれます。カーボンフレームが漕ぐものだとしたらこちらは乗るものという感じ。タイヤの太さもあわせて安定感を出してくれます。

タイムは誤差の範囲内で明確な違いはなし。クライムのタイムは割とその日のメンタルで決まるような気がします。

 

ひとつ気付いたロードとの明確な違いは、高速区間(緩やかな下り等)で太いタイヤとリムが大きな音をたてて風を切っていること。ロードバイクで時速40kmあたりを超えると聞こえてくるコオオオォというあの音が時速20kmくらいから聞こえてきます。

トレッドの有無も含めてきっとここにレーシーかそうでないかという違いがあるのでしょう。

でもグラベルバイクでロードレースに出るわけじゃないんだから気にしない。

 

週末にも時間を作ってグラベルバイクの本領・オフロードに出陣。

サスペンションはないしハンドルバーは幅が狭いからかなり気を遣わないとコントロールが難しいものの、走破力という意味だとフロントサスのMTBにも負けないのではないかというレベルでガンガン進みます。ダウンヒルはブレーキの微調整が必須。オンロードとは違うクイックな反応が必要になる気がします。

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おまけで付いてきたプラスチックのフラットペダルだけはオフロードには最悪だった(泥がつくと滑りまくる)のでMTB用のゴツゴツした金属ペダルかSPDペダルに変えるのが良さそうです。そんな予算はどこにもないけど。

 

さらに布教

私がこの記事を書くのにモタモタしている間に実はもうひとつ変化がありました。

グラベルバイク楽しいよ!と話したところMTBからロードへの乗り換えを検討していた友人が即決でVerenti Tiagraを購入してくれたのです。

いやーよくそんな貯金あるなー()という尊敬?羨望?はさておき、彼はディスクブレーキと太タイヤを装備したこのロードバイクをいたく気に入っているようです。

 

そんな彼とは先日非常に綺麗な場所にライドに行ってきたので次の記事で詳細に紹介しますね。

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まとめ

グラベルロードはディスクブレーキと太いタイヤを装備した上で耐久力を高めたロードバイクです。レースでなければ基本的にロードバイクにできてグラベルバイクにできないことはありません。逆にオフロードでの走破性が高すぎて、そしてその信頼性ゆえにどこにでも連れていけるのが楽しすぎて、サブの機材としては最高の選択でした。

少し安っぽいサドルを身体に合うものに帰れば相当な長距離でのロングライドにも問題なく使えそうです。

そしてWiggleの独自ブランドは周知こそあまりされていないものの自転車を扱う会社ならではの丁寧な組み立てと間違いのないパーツ選びで圧倒的なコスパを実現していることも分かりました。

 

フルカーボンのハイエンドロードにボラウル履いてパレサイに行くのも良いけど、やっぱり自転車は乗ってこそ・景色と風を楽しんでこそのものだと私は思います。

海外でも似たような傾向があるらしく、グラベルバイクでのレースなども盛んになってきているとのこと。

ちょっと普段と違う横道にそれて非舗装路を走ってみたいなーと思うような日の相棒に、グラベルバイク、いかがでしょうか。

 

それではまた。

あけましてグラベルロード(2/3)

sterling-ym.hatenablog.com

あけましてグラベルロード(1/3) からの続き。

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前回の記事ではグラベルロードがどういう特徴を持っているかを理解したので、今回はいよいよその存在意義について。

 

グラベルロード/グラベルバイクの意義

ロードバイクに初めて乗ったときのことを覚えていますか。

風を切る音とともに自分の足で車輪を回して見たことのない景色を見る感動。それこそがきっと誰もが感じるロードバイクの楽しさの一つだと私は思っています。

 

そして、色々と調べていく中でグラベルロードはその感動をもう一歩先で再び味わうための自転車なのだろう、という印象を受けました。

ロードバイクの速さと軽快さをオフロードでも味わえたらどうだろう?

山の向こうにある景色を見るために暗いトンネルではなく未舗装の細い道を自分で探しながら走っていけたらどうだろう?

もう一歩先、というのはそういう意味です。

 

もっと遠くへ

Cyclowiredという自転車サイトにキャノンデールのSLATEを題材にした連載があります。この記事が本当に良作ばかりで、読んでいて自分も参加しているような感動と興奮を伝えてくれる臨場感に惹かれて私は定期的に何度も読み返しています。

土佐編がお気に入り。

www.cyclowired.jp

この「好きなところへ、好きなように」行ける気軽さがグラベルバイクにはあります。

ロードバイクが速さで楽しむものだとすると、グラベルバイクはルートから解放されることで得られる自由を楽しむものなのでしょう。

 

もうひとつグラベルバイクの楽しさを教えてくれるのがこの動画。

www.youtube.com

やたらと重そうなバックパックを背負っているのはあえて突っ込まないとして、この動画はグラベルバイクが「アドベンチャーバイク」とも呼ばれる所以を示しているような気がします。アドベンチャー、大人がちょっと冒険に出てみたくなったときのツールということ。

 

もしくは、普段訪れている峠道から横に伸びているトレイルに入ってみるのも良いかもしれません。ロードバイクは速いからこそ遠くにいけるけど、逆に好みのルートが固定化されてくると目的地に一直線に向かうその過程で多くの横道を無視しているのも事実。

たまには知らない路地、トレイル、未舗装地帯、そもそも道のない荒野、といった場所に行ってみると思いがけなく近い距離に自分の知らないアドベンチャーが待っているかもしれません。

 

実際にどう使うのか

キャノンデールやらGTやらに十分感化されて宣伝文のようなことを書き終えたところで、現実に荒野の果てに住んでいるわけでもない都会人にグラベルバイクが果たして必要なのかというテーゼに向き合ってみましょう。

 

本当に舗装路しか走らない、決まったルートだけしか使わないのであれば、グラベルバイクは不要かもしれません。そもそも似たようなパーツのグレード同士で比較するとロードバイクのほうが往々にして安いのも事実(人気の高まりでエントリーモデルの低価格化が進んできているので)。

 

しかし少しでも自転車に乗って遠くに行くことに喜びを感じる人であれば、グラベルバイクが突如として輝いて見える状況が存在します。

ロングライド。

山をいくつも越えるようなアウトドア寄りのロングライドを想像してみると、グラベルバイクはロングライドに付随するたくさんの問題を一気に解決してくれることがわかります。まず第一にタイヤの空気量が多いから空気圧を低く設定できて、振動が少なく快適に長時間乗れます。未舗装路を恐れる必要もありません。雨が降ってもディスクブレーキで問題なくダウンヒルを走れます。フレームが強いから大量の荷物、場合によってはキャリアをつけての走行も問題ありません。

 

遠くに行きたい人にとって行き先の可能性を広げてくれるグラベルバイクはもしかしたらフルカーボンのエアロな高速バイクよりも魅力的に感じられる場合があるのではないでしょうか。もし既にロードバイクを持っているのであれば(贅沢な話だが)サブ機としてこれほどマルチロールに活躍できる自転車の選択はないはずです。

 

買いました

...ということで、2018年冒頭にいきなりグラベルバイクを購入しました。

記事冒頭に無言で貼った写真が初乗りのときの記念の一枚。ボトルがやたらと目立つのは普段のロードバイクの色に合わせたものしか持っていないから。今後の欲しいものリストに濃い色のものを追加しなければ。(笑)

 

こちらはフイルムっぽい感じに仕上げてみた写真。いつかフイルムカメラを持って写真を撮りながらポタリングしたいけど今のところはジャージのポケットに入るM43カメラが現実的な機材選択です。グラベルバイクなら大きなサドルバッグを付けても良いかも。クロモリフレームにはどんなスタイルも似合いそう。

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ところで、冒頭のロードバイクの楽しさについて、見たことのない景色を見る感動を最初に私に教えてくれたのは漫画でした。鎌倉女子高校自転車部・東京自転車女子・ろんぐらいだあす!...自転車を題材とした名作は意外と多いです。これほど女の子ばかりでなくても良いのではと思うけど、そこはシャカリキ!弱虫ペダルの男臭さで中和されているので案外バランスは良いもかもしれません。初めて自転車に乗る人の感動を描いている漫画に惹かれるし、そういうものが今の自分のスタイルの原型になっているのだと思います。もちろん弱虫ペダルも面白いけど。絵を描いて感動を伝えられる漫画家ってすごいなあ。

 

次回はオンロード&オフロード両方に行った感想とパーツ紹介などを中心に書きます。

ではまた。

あけましてグラベルロード(1/3)

あけましておめでとうございます。

 

日本にいるときは何気なくつかっていたこの挨拶がとても懐かしく感じます。

Happy New Yearは新年になる前から使う言葉で、よいお年を!というのとセットのような感覚です。だから新年を迎えてめでたい、ありがたい、フレッシュな気持ちで今年も頑張ろう、よろしくお願いします、というような感覚が非常に日本的というかアジア的なものなのだということを実感します。

 

さて、最後に記事を更新してからだいぶ時間が経ってしまいました。

Primeホイールの記事が人気で毎日かなりの数のPVがあるみたいですが私自身ホイールは未だに手に入っていません。来月までに予算を貯めよう!と思いつつ半年が経ってしまいました。春までには手に入れたいなあ。

前回の記事では自転車乗りにとって写真はどうあるべきかというようなことを書いていましたがあの後にカメラのレンズを3本も仕入れたり写真を撮りまくっていたこともあり私には結論が出せませんでした。そのうち気が向いたら続きを書きますね。

 

最近の写真たち。暖冬のおかげで真冬のはずなのに秋と同じ格好で走り回っています。いまだに紅葉が残っていたりして楽しいです。

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下から取るとダイナミックな写真になるけどコラムカットしていないのが目立ちます。

ポジション固定してから何千キロも走ったけど取返しのつかない作業だけにコラムカットにはいまだに踏み切れず。

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↓下はおそらくこの秋冬で一番気に入っている写真。広角単焦点レンズで撮って少しクロップすると遠近感とか視野の感覚的に人間の視点に近い感覚が得られる気がします。

秋は黄タマくん(=愛車)の少し緑がかった黄色が映える季節。写真撮影を楽しみながら色々なところに行きました。

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写真の話はさておき、せっかく新年に記事を更新するのだから何かとても新しいことを書こう!ということで今日はグラベルロードのお話し。

グラベルロードって何?何のためにあるの?ロードとは違うの?ロードじゃだめなの?逆にMTB(=マウンテンバイク)とは違うの?という私自身が抱いていた疑問を年末年始の間のリサーチで解消したのでメモとして残しておきます。

多分3回に分けます。そしてその次にはインプレ記事も...?(意味深)

 

あくまで私自身の理解なので間違っている部分があれば教えてください。

 

グラベルロードとは

グラベルロードとは、ロードバイクの一形態。欧米ではグラベルバイクとも。コンポーネントやフレームの構造はロードバイクを基準にしつつオフロードに対応するような機能・特徴を盛り込んだバイクです。ロードバイクMTBの間とかシクロクロスのロングライド用とかいう言い方をされることもありますが私の調べた限りの特徴としてはあくまでロードバイクの亜種であってロードバイクから離れた新しいジャンルではありません。

 

こちらは毎度おなじみGCNのプレゼンター、サイモンのグラベルバイク。レース仕様なのでアグレッシブな設定になっています。

www.youtube.com

 

グラベルロードの主な特徴は以下のとおり。

 

ワイドタイヤに対応

ただしロードバイクのホイールの直径基準であるる700cが基本となるので最初からMTB用の小径ホイールをつけていることはほとんどありません。

 

・ディスクブレーキ

2016-17年頃からやっとディスクロードの概念が普及してきましたが従来のロードバイクリムブレーキが前提だったためその決定的な弱点である悪天候時のブレーキングを改善するためにグラベルロードにはディスクブレーキ装備が一般的になっています。

 

・マッドガード(泥除け)に対応するタイヤクリアランス

ワイドタイヤに対応するだけでなく悪天候のロングライド時に大活躍する泥除けを装備できるものが増えています。泥除けや荷台を装備するためのネジ穴が最初から開いているのが特徴(例外はあります)。

 

・アップライトな姿勢

もちろん設定次第で変わりますがグラベルバイクはロードバイクよりも「攻めない」姿勢で乗ることが前提となります。サドルに近いハンドルや少し高めのステム位置が基本。

 

・コントロール性の重視

ロードバイクは空気抵抗を最小にすることを第一目標として姿勢が決定されますがグラベルロードはアップライトなだけでなくオフロードでのコントロール性を重視して設計されています。幅広のドロップハンドル、少し寝かせ気味のフォーク角度、地面からの位置が高いBB(ボトムブラケット=クランク回転の中心となるベアリング部)、短めのステムなどがその例です。キャノンデールのSLATEやスペシャライズドのDivergeのようにサスペンションを装備するものもあります。

 

・メンテナンス性の重視

オフロード=泥がつきやすい=掃除とメンテナンスが必須。高価なバイクでもメンテナンス性の重視した結果 internal routing (=フレーム内にブレーキやシフターのケーブルを通して綺麗に見せるミドルレンジ以上のロードバイクにはほぼ必ず採用されるケーブルのルーティング方式) を採用しないモデルがあります。

また悪路ではシクロクロスのように肩に担いで踏破することも想定されておりアウタールーティングの場合もケーブルがダウンチューブ(自転車の下側のフレームを構成するパイプ)側に設定されています。ケーブルがトップチューブにあると持ちにくいのでこれはかなり嬉しい気遣いです。

 

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(c)BikeRadar. All rights belong to: Best gravel and adventure road bikes - BikeRadar

 

実物が気になる方は人気グラベルバイクを紹介したBikeRadarの記事も読んでみてください。英語記事ですが写真を見るだけでグラベルバイクの雰囲気が分かる良い内容となっています。

www.bikeradar.com

次回はグラベルバイクのアイデンティティと使用目的について書きます(忘れなければ)。ではまた!2018年もよろしくお願いいたします。

コンタドールの引退と写真と記憶と。

こんにちは。

夏が終わり少しずつ曇りの日も増えてきましたが、週末は猛暑が続いてなかなか自転車に乗れなかったのでピアノを弾いたりしながらのんびりしつつ、細々としたメールやら何やらを片づけて過ごしました。今日はガチンコヒルクライム。ちょうどこの記事の下書きを書いている途中だったので写真は撮らずに帰ってきました。

今日から数日間は私の個人的な写真に対する思いをスーパースターの引退に関連付けてつらつらと書いてみます。写真をとることとロードバイク旅の記憶(記録)を残すことは両立できるのか、がテーマです。

 

エル・ピストレロの引退

ブエルタが終わり、コンタドールが引退しました。

ここに細かく書かなくても皆さんご存知だと思います。とにかく見る人の心を掴む走りをする彼は最後まで最高のクライマーでした。アングリルの激走とステージ優勝は間違いなくロードバイク史に永遠に残るスーパースターの最高の引退試合として語り継がれるでしょう。本当に胸を熱くしてくれるスターでした。どうしてもあのピストルが見たかったので感無量です。ありがとうコンタドール

この写真がカッコよすぎて保存しました。オーラがありすぎて胸がバキュン(意味不明

 

スーパースターの写真

いつも拝見しているシクロワイアードというサイトでコンタドールの競技生活を振り返る写真特集が組まれていました。(前後編)

www.cyclowired.jp

有名なシーンばかりである意味誰でもネットで見ることのできる写真が多いけれど(トップスターなので当たり前ですが)、こういう企画は楽しいです。写真がこういう企画で感動を与えてくれるのは各場面の写真に語られないコンテキストがあるからですよね。各写真に収められている場面で何が起きていたのかを多少なりとも知っているからこそ、「そうそう、この場面はすごかった!」と盛り上がることができます。

そして実際、ブエルタ最後のアングリル峠ではコンタドールが一人アタックをかけて抜け出した瞬間から誰もが歴史的な瞬間の目撃者として「この場面は永遠に残る」と意識しながら見ることで、歴史が歴史として過去のものになる前から歴史が形作られるという展開になりました。

なんだか回りくどい書き方をしてしまいましたが、きっとコンタドールをあの場で応援していた地元の人たちは彼の独走が間違いなく歴史的な引退優勝になると信じていたからあれほど熱狂的な(かなり危ないような気もしましたが)応援ができて、それが彼に最後の力を与えて、そしてその場面(顔を真っ赤にして叫ぶ観衆と力を振り絞ってアタックするコンタドール)を写した写真が歴史の一枚として残ったのだと私は思っています。それほど感動的な場面で、それほど力強い走りでした。

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写真はこちらからお借りしました。高解像度の素晴らしい写真特集なのでお時間があれば覗いてみてください↓

cyclingtips.com

写真と記憶と

ここでふと思ったことがあります。こういう歴史的な場面は誰もが歴史の瞬間として記憶・記録しようとするからこそ更に深い歴史が形作られることに間違いはないと思いますが、自分の記憶の場合はどうでしょう。とても貴重な体験をしたり貴重な風景を見たとき、それが貴重で大切な体験だと意識することでその体験は更に思い出深いものになるのでしょうか。

別の言い方をすれば、立ち止まってカメラを取り出すことでその場面はより強く思い出にのこるのか、です。

前にも書きましたが私はそこそこ長い間カメラを触ってきて、幸運にも大会で入賞を頂いたり展示会に参加させてもらったこともある程度には真剣にやってきた自負があります。カメラを取り出してファインダーから景色を覗くのはひとつの至福の時間だと思っていますしシャッターを切る瞬間に手に伝わるミラーの振動がたまらなく好きです。でも、というかだからこそ、ロードバイク(とか普通の旅行とか)で貴重な体験をしたときにカメラを取り出すのが本当に良いことなのかどうかが分からないのです。

私は、写真を撮りに行くときはカメラを持って歩きます。どんな瞬間でも撮れるように視界にうつる風景をカメラで撮った風景に変換しながら歩きます。写真を撮り歩くというのはそういうことだと思いますし、去年の夏はそうしてヨーロッパ中を放浪してきました。そして、じゃあそれと同じようなことがロードバイクとかハイキングとかその他のことにも言えるんじゃないかと思うのです。ロードバイクで走る風景はロードバイクで走りながらみるのがいちばんいいんじゃないか、と。

ここまで書いておきながら自分の中で結論が出ていないので続きは次回の記事を書くときの自分に任せます。なんだか精神論みたいな記事になってしまったので次回は現実的な話をします。

ではでは。

予習なしで2級峠クライム&高速ダウンヒル&ピカピカFD(その後)

こんにちは。

昨日は近くの有名な峠(highway 9)のクライムに初挑戦・初登頂(!)してきました。

 

 

予期せぬ2級峠クライム

車乗りにも有名な「峠らしい峠」だから大変。斜度は連続して変化するし平均でも7%あるし、頂上までは9kmくらいあります。

そもそも、元々昨日はミニ峠を2個登って終わりにする予定でした。それが、

 すたりん「峠2つクリア!残りは降りるだけ(*´▽`*)」

 後ろの車「プップー」

 すたりん「あ、お先にどうぞ。この先T字路で左折するんで」

という経緯で車に道を譲ってタイミングを逃したのがすべての始まり。

交差点直前に追い越した車が右折したせいでタイミングを逃してT字路で左折し損なった挙句、何故か往来が激しくて後の車にも追い立てられ、信号のないT字路を右折するしかなかったすたりん。

図にするとこんな感じ。マウスでお絵描きしたの5年ぶりくらいです。

ちなみにアメリカは右側通行。

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...ここで右折したら峠への一本道やん( ゚Д゚)!

 

2つ目の4級峠はhwy9(ハイウェイ9、ただし自転車の進入できる峠道)に接続しており、ここで右折するとその先は9kmの一本道、斜度は平均7%。ちょっと短めでちょっと斜度のあるヤビツ峠といったところでしょうか。以前まだフラットペダルを使っていた頃に入口から2キロくらい挑戦して挫折した経験のある長い峠です。5分くらい漕いでみたけど何故かUターンするタイミングを逃しまくり、ヤケクソになってこれは峠にリベンジするしかない( ー`дー´)!と覚悟を決めました。

 

普段初めて行く場所では写真を撮りまくるのですが、頂上まで一切スマホを触る余裕がありませんでした。だってこんなの予定してなかったし、ミニ峠で全力アタックしちゃったから。。。

登れど登れど坂。普段からミニ峠で鍛えているので息が切れるとかそういうことはありませんでしたが、どれくらい時間がかかるのか予測がつかない場所ではメンタルが弱りがち。あれだけ追い立ててきたくせに途中から車の往来が全くなくなって景色は独り占めだったのがせめてもの救いでした。アクションカム欲しいな。。。

インナーローに落として30秒漕いで、ダブルクリックならぬトリプルクリックしてダンシングで30秒間休みつつ加速...というのを何回繰り返したか分かりません。シッティングだと10km/h、ダンシングだと15km/hくらいのスローペースで延々とゴールを目指します。

私はガリガリ君なのでクライムのほうが得意ですが、多くの人が言う通りクライムはメンタル。予期せぬクライムで9-10km休みなしのクライムは本当にキツく、途中からは「こんなに登ってきたんだ」と自分を奮い立たせるために時々振り返りながら回し続けました。平均7%の坂だとヘアピンで10-15%くらいになるので、そういう区間で振り返ると相当な標高差を実感できます。これ結構有効です。

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頂上で休んでいたらオバチャンが「自転車で登ってきたの!?すごいねー!」とスマホで写真をとってくれました。夜間の走り屋の聖地としてだけでなく週末は自転車乗りが大量にいる峠として有名な場所だったので、驚いていたということはきっと地元の人ではないのでしょう。

結果としてタイムは40分。自称クライマーとしてはかなりザコい反省点の残る結果でしたがStravaデイリーランキングはあと1%速ければトップ10/100、くらい。頑張ればいけることが分かったので次は最後にアタックできるペース配分を考えて行ってみたいです。

 

高速ダウンヒルは楽しい

車好きとしてかなり高速で攻めまくったことのある峠だったので、自転車で初とはいえダウンヒルはタイムが期待できます。一瞬で終わったので詳細は割愛しますが、

 

最高速80km/hくらいで後続のプリウスをちぎりまくって優勝。ブレーキングのタイミングとかコーナーの立ち上がりのタイミングもバッチリ。いやー楽しかった。

 

そして翌日のピカピカFD

高速ダウンヒルの後といえば自転車につきまくった埃の掃除大会。翌日(今日)、掃除をしてから私のTwitterでは恒例の「ピカピカFD」の写真撮影をしました。

こちらが元の写真。ひっくり返して掃除していたので上下が逆で、カメラ内補正は最低にしているのでコントラストもシャープネスも少な目。この設定は補正後の完成図をイメージできるようになると使いやすくなります。

ちなみに、このブログでカメラネタを書いたことはありませんでしたが私はカメラ歴のほうがだいぶ長いんです(*´з`)

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補正後がこちら。

トンカーブだけで補正しています。金属光沢は白トビしないように気を付けつつギリギリまでコントラストを上げるのがコツ。色もいい感じです。

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いずれ時間のあるときに写真編集について記事にしようかなーと考え中です。

今日のところはピカピカに磨いたFDとチェーンリングの写真を撮れたので満足(*´з`)

 

今日もどこかを登ってきます。ではまた。

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